後見制度に不安のある方へ

目次

成年後見制度を使ったほうが良いかどうか、迷っている方へ

成年後見制度は、判断能力が低下した方の暮らしを守るという良い面がある反面、安易に利用を開始してしまうと、後々後悔の念が生ずる可能性のある制度です。

まず第一に、現在の成年後見制度は「一度就けたら原則として外せない」制度設計になっているため、不動産の売却や遺産相続など、「目の前の課題」が解決した後も、本人の状態が回復しない限りは生涯にわたって利用し続けなければなりません。

仮に専門職後見人(弁護士や司法書士など)が成年後見人になった場合、課題は解決し、その後は安定した生活を送っているにもかかわらず、長年にわたって報酬を払い続けなければなりません。多額の費用を本人の財産から払い続けなければならず、その額は数百万円にも上ることがあります。

専門職後見人側からしても、特別に業務を行わずとも安定的に収入が入ってくるため、いくら家族から「辞任して欲しい」とお願いしても、「成年後見制度は辞められない制度になっている」と一点張りで、状況を変えようとしない場合もあります。こうした場合、専門職後見人は自ら辞任を申し出て、適切な家族に後見人を引き継ぐことを検討すべきではないでしょうか。

一部の専門職後見人の話になりますが、悪質なケースの場合、きちんと財産管理を行わなかったり、家族を本人に合わせなかったり、無理やり不動産を売らせたりといった後見人も少なからず存在しています。「日本司法支援センター法テラス」が発行するパンフレットでも、そうした専門職後見人の存在を危惧しているのか、後見人の解任請求ができる旨の啓もうを行っています。

成年後見Q&A(日本司法支援センター法テラス)

Q4を以下に抜粋

家族にとってみると、後見人をつけるまでは普通に暮らしていたにもかかわらず、後見人を就けた途端、何も知らない後見人が外からやってきて、「あれこれ指示されて頭にくる」といったケースも実際に起きており、こうした事件が起きるたびに、「後見人は怖い」といったイメージが蔓延してしまう原因になっているかもしれません。(ただし、大部分の専門職後見人の皆様は、ご本人のために全力で活動されていらっしゃいます。)

「銀行から後見をつけるように言われた」「介護関係者や行政から後見が必要と言われた」と、他者からの要請をきっかけに成年後見制度を利用する方は多くいらっしゃいますが、後見制度を利用するにあたって、本当に必要なのかどうか、支払う費用に見合う効果はあるのか、家族では本当に対応できないのかを、じっくりと慎重に見極める必要があります。

そのため、制度を利用するにあたって、しっかりとした知識を持ち、不明な点はご自身で十分調べたうえで、制度の利用の有無を決めていきましょう。

成年後見制度の利用を検討する手順

こうした話を聴くと、多くの方にとっては「できることなら成年後見制度は使わないで済ませたい」というのが本音ではないでしょうか。

誰しもが「自分の事は自分で決めたい」「家族の事は子である私が一番わかっている」という気持ちをお持ちでしょうし、全く本人の事を知らない第三者に、偉そうにあれこれ指図を受けたくないという気持ちもあるかもしれません。

そこで、成年後見制度の利用にあたって、「本当に後見制度を利用しなければならないのか?」を検討する手順をご紹介します。

STEP
成年後見制度を使わないで、「目の前の課題」は解決できないか??

まず初めに、「今目の前にどのような課題があるのか」、「その課題は本当に成年後見制度を利用しなければ解決できないのか?」を検討します。

例えば、「預金を引き出す」を例に挙げて考えてみます。

銀行から「預金を引き出すには成年後見制度が必要だ」と言われたとします。しかし、その預金は本当に引き出す必要のある預金なのでしょうか?ご家族の方が本人のキャッシュカードを使って引き出すことは、場合によっては問題になることもありますが、実際に生活費を本人から頼まれて引き出しているケースも多いでしょう。また、公共料金や施設費の支払いなどの定期的な支払という事であれば、自動引き落としを相手方に依頼してみることも検討に値します。

更に、ほかの金融機関にも打診し、同じように成年後見制度が必要かどうかを確認すると良いでしょう。金融機関は決して横並びではありませんので、もしも「ある銀行で後見人を就けなくてもかまわない」と言ってもらえたのであれば、それを預金先の金融機関にも伝えてみてください。金融機関によっては、対応してくれるところもあるかもしれません。

最も必要なことは、預金先を一か所に集中させないことです。仮に一か所にすべての預金を入金していると、そこがダメと言われたら打てる手がなくなってしまいます。リスクを分散するという点からも、複数の口座で管理するのが望ましいでしょう。

他にも、不動産の売却や遺産分割などの法律的な手続きの場面であっても、基本的には「その課題が解決すれば、その後はこれまで通り」の生活を送るはずです。成年後見制度は、一度就けると原則外すことができない制度ですので、本当に後見制度を付けなければだめなのか?をしっかりと確認し、対応してくれる業者や士業を探してみるとよいでしょう。

STEP
将来が不安な方は「任意後見契約(将来型)」を頼れる人と結ぶ

もしも、ご自身が認知症等によって、判断能力が大幅に低下してしまったとき、ご自身の周りに世話をしてくれそうな人がいない場合は、予め後見人を自分の意志で決められる「任意後見制度」の利用が良いでしょう。

任意後見制度の詳しい制度の説明については、当ホームページでもご紹介しておりますのでそちらにてご確認ください。

成年後見制度は、「自分で後見人を選べる任意後見」と「家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見」の2種類があります。

どういった人が自分の後見人になるのかわからないのは不安だという方や、自分の暮らしを自分の希望に沿って送りたいとお望みの方は、お元気なうちから任意後見人になってくれる方を見つけておき、その方と任意後見契約を結んでおくことをお勧めします。(契約をするだけでは後見人の仕事は何も始まらず、引き続きご自身で全て行うことができます。判断能力が低下した場合に限り、予め決めておいた任意後見人から支援を受けることができます。)

将来の万一に備えて、ご自身が暮らす場所や趣味など、希望する暮らしの実現に加えて、かかる費用の面でも、家族や知人等に任意後見人を任せることで、報酬を抑えたり、場合によっては無報酬とすることもできるでしょう。そうすることで、本人の財産を出来る限り減らすことなく、本人の支援を行うことができます。(なお、任意後見制度は必ず裁判所が選ぶ「任意後見監督人」を付けなければならないため、任意後見監督人の報酬は必ず発生します。月額1~2万円程度が相場となっております。)

もしも任意後見人になってくれそうな人が見当たらない場合は、お住まいの市区町村や社会福祉協議会などに相談してみるとよいでしょう。もちろん、当社でも任意後見人への就任支援を行っておりますので、ご興味のある方は一度お問合せ頂きましたら、詳しくご説明させていただきます。

任意後見人の就任サービスのご案内

STEP
判断能力の衰えを感じる方は「任意後見契約(即効型)」を結びすぐ使う

現に判断能力の衰えを感じており、更には目の前に解決すべき課題がある、という方においては、ご自身で希望する方と任意後見契約を締結し、その後すぐに任意後見人に支援してもらうという方法があります。

これは、任意後見契約の中でも「即効型」と言われ、契約後すぐに効力が発生する(後見人としてすぐに支援ができる)形となります。

なお、STEP2の「将来型」は、契約してもすぐには後見人として仕事を行うわけではなく、更には判断能力が低下しない限り、後見人として就任することもありません。将来判断能力が低下し、かつ解決すべき課題が目の前にあるときに、後見人に就任して支援してもらいます。

即効型は、場合によっては公証役場で契約を結ぶにあたって、公証人から断られてしまう場合もあります。しかしながら、公証役場は一か所だけではなく、また受けるか否かの判断も、各々の公証人の判断によって異なってきます。

よって、一度断られてしまったとしても、あきらめずに他の公証役場に連絡の上、即効型の任意後見契約が結べないかどうかを確認する粘り強さが大切です。

STEP
何もしない

驚かれるかもしれませんが、何もしない(つまり成年後見制度を使わない)というのも、有効な手段の一つです。

目の前の課題は、本当に今必要なのかを改めて問い直します。例えば定期預金の解約は本当に今必要なのか、遺産分割を行うにしても、複雑な分け方をせずに法定相続割合(法律上の割合に基づく配分割合)とすることができないかなど、改めて今行おうとしている手続きを見直してみてください。

仮に不動産を売却したり、遺産分割をしたり、定期を解約すること等が、多少有利な条件で進められるとしても、それにあたって成年後見人として専門職が就任した場合には、これから何年にも渡って専門職後見人に報酬を払い続けることになりますので、有利な条件など吹っ飛んでしまうかもしれません。

更に、運悪く相性の悪い専門職後見人に当たってしまった場合、これまで何ら問題なく暮らしていた生活が一変してしまう可能性もあります。

「専門職だからちゃんとしているはず・・・」「裁判所が言うんだから間違いない」といった幻想や思い込みを持たずに、本当に長年にわたって後見制度を使わなければならないのか、費用対効果が見合うのか、といったことを再度検討していただくことをお勧めいたします。

STEP
法定後見制度を使う(ただし、様々な工夫を施す)

STEP1~4までを検討した結果、それでも認知症の症状が重く、かつ目の前に解決しなければならない課題がある等の事情で、成年後見制度を利用しなければならないケースもあるでしょう。

そうした場合、単に取引相手や紹介された司法書士等の第三者に言われるがままに後見申し立てを行ってしまった結果、本人の利益につながらない形での制度利用になってしまう可能性があります。

具体例として、例えばご本人の施設入居費用の工面のために本人名義の自宅を売却したい、そのために不動産業者から「成年後見人を就けてください」と言われたとします。

成年後見の申し立ては、家庭裁判所に「申立ての実情(理由)」を報告して行います。
これまではご家族が本人の財産管理や介護の手続きを行っており、特段問題はなかったとしても、仮に裁判所への申し立ての実情の欄に、「財産の管理や介護の状況が、今後家族では対応が難しい」といったような事情を書いてしまうと、裁判所としては「第三者専門職を後見人にしたほうが良い」といった判断になりやすくなってしまいます。

第三者の専門職(弁護士や司法書士など)が後見人に就任すると、当然ながら毎月の報酬が発生してしまいますし、更には不動産の売却や施設の入居など、特別な手間が発生した場合は、追加で報酬を払わなければなりません。

専門職後見人の場合、無事不動産を売却し、施設に入居できたとしても、その後も引き続き報酬を払い続けなければなりません。酷いケースですと「年に1回程度しか訪問に来ない」「施設側に電話で確認して終わり」といった程度の働きしかしないにもかかわらず、年数十万円の報酬を受け取り続けている場合もあります。

不動産の売却自体は、特段専門知識が必要という事はなく、不動産業者の説明に従って進めればよいですし、その後の施設への入居手続き等も、ご家族の方で十分に対応できるでしょう。

このように、成年後見制度を利用するにあたっては、「目の前にある課題(上記例では不動産の売却&施設の入居手続き)」をクリアした後のことも考慮して、誰が後見人になるのがベストなのかを十分に検討することをお勧めします。

法定後見制度の利用可否の検討ポイント

上記ステップの1~4までを検討した結果、法定後見制度を使わなければならないとなった場合の、法定後見制度の利用開始のポイントについてお話します。

上記にて再三に渡り記載した通り、成年後見制度は「一度就けると原則外せない制度」です。慎重に考えましょう。

2つある成年後見制度の一つである「法定後見制度」は、既に判断能力が低下している方を対象とした制度です。更に言うと、誰が後見人に就任するのかが分からない制度です。運任せな面も多々あります。

本人にとってこうした法定後見制度が必要かどうかの見極めポイントは、以下の通りです。

では実際に、具体的な事例を通して、法定後見制度の利用を検討していきます。

事例①:親が認知症で施設に入っている

検討ポイント判断能力の低下解決したい課題相手方の求め
評価××

親が認知症であることだけをもって、すぐに「法定後見制度の利用」を考える必要はありません。

お子様やご家族が身の回りの事や、様々な手続きを代わって行うことができるのであれば、現段階で特に問題がない以上、法定後見制度を利用するメリットはないでしょう。

ただし、例えば「高額な契約を本人が勝手にしてしまう」「勝手にお金を引き出してしまう」といった状況にある場合は、後見人が契約を取り消せたり、お金の引き出しを本人ではできなくするなどの処置をとる必要が出てくる場合もありますので、ご留意ください。

事例②:金融機関から「預金の引き出しに後見が必要」と言われた

検討ポイント判断能力の低下解決したい課題相手方の求め
評価
(少額なら不要)

(窓口次第)

こちらもよくある事例として、金融機関の担当者から後見人を立ててほしいと言われたケースです。

金融機関の担当者の中には、あまり成年後見制度に詳しくない方もいらっしゃいます。
単に認知症を発症しているという事だけをもって、即「後見制度が必要」だと判断してしまう事もあるかもしれません。

日常的なお金の出し入れ(数万円程度)であれば、キャッシュカードを使ってATM操作をすればよいでしょうし、ご家族の方が代理人カードを作成しておいて、必要な額を引き出すことでもよいでしょう。

高額な振込など、窓口で手続きが必要な場合ですと、本人がうまく対処できなかったりすると、窓口担当者から「振り込みができません」と言われてしまう事もあるかもしれません。

そんな時は、①ご家族が本人の委任状をもって、窓口で手続きを行う、②インターネットバンキングを開設して窓口に行かなくても良いようにする、③自動引き落としにできないか取引の相手方に確認するなどの方法を検討してみるとよいでしょう。

いずれにしても、金融機関より後見人が必要と言われたとしても、すぐに後見人を就ける前に、他に手段はないのかを十分に検討してください。

事例③:相続が発生し、税理士から「後見が必要」と言われた

検討ポイント判断能力の低下解決したい課題相手方の求め
評価
(遺産分割の内容次第)

(求める相手次第)

本事例も、法定後見制度を利用開始するにあたって、よくあるケースです。

相続手続きにおいて、関係する士業(税理士、司法書士、弁護士など)から後見人を就けて欲しいと要請されることがあります。

これは、遺産分割協議や税務申告などの手続きを士業に委任するにあたって、「本当に本人の意思かどうか(意思確認)」を士業が行うに際し、認知症等によって判断能力が低下している場合ですと、その確認が十分にできない事が挙げられます。

しかしながら、例えば生前に本人と士業が親しく付き合っていたりするなどによって、本人の意思を予め知っていたといった場合や、明らかに本人にとって有利になるような遺産分割内容であったりした場合に、果たして本当に「その時点での」本人の意思が困難であることだけを持って、後見人を就ける必要があるでしょうか。

遺産分割の場面で、仮に専門家が後見人に就任したとしても、配分内容的には同じかもしれません。
後見人の職務としては「最低限は法定相続分は確保せよ」ですので、それを上回る財産を本人が取得できる以上、果たして後見人は「何のために」「誰のために」業務を行うのでしょうか。

もちろんのこと、すべてのケースで後見人が不要という事ではなく、本人のこれまでの発言や、財産の分け方、家族構成などを総合的に判断の上、後見人を就けても就けなくても変わらないのであれば、後見人無しで進めることも考慮してよいと思います。

更に、後見人を求めているのはだれかについても、慎重な判断が必要です。

亡くなった方が遺言を残していて、遺言の中で「遺言執行者」を選任していた場合は、遺言執行者は遺言内容を実現する義務を課されています。つまり、受け取る相続人の判断能力の有無に関らず、遺言執行者は遺言内容を実現しなければならないのです。

これは、裏を返すと「本人(財産を受け取る相続人)の判断能力は関係ない」ということです。遺言執行者がいれば、遺産分割協議を行う必要もなく、更には後見人を就ける必要も無いのです。

最終的には遺言執行者の判断とはなりますが、遺産分割協議をしなくても済むように予め遺言書を作成しておき、更に遺言執行者を遺言書内で指定しておくことによって、残された家族が安心して相続できるようにしておくことは、とても大切なことだと言えるでしょう。

事例④:親が認知症で、これからが不安

検討ポイント判断能力の低下解決したい課題相手方の求め
評価×××

本事例のように、目の前に解決したい課題が無いにもかかわらず、親が認知症を発症したというだけで、「成年後見制度を利用しなければならないのか?」と考える方は意外に多くいらっしゃいます。認知症を発症したとしても、後見人が就いていない方はたくさんいらっしゃいます。

漠然とした不安だけで後見人を就けてしまった場合、実際に後見人に行ってもらう業務が無く、無駄に報酬だけを払い続けなければならないという事もあります。

差し当たり解決したい課題が無いのであれば、急いで後見人を就ける必要性は乏しいでしょう。

それでもやっぱり「不安」という方

後見制度の利用を考える際、不安材料の一つとして「専門家への報酬額」がいくらになるのかが分からない、という問題があるかと思います。

ここからは、成年後見制度において要する費用について説明します。

後見人に要する費用

2つの後見制度(任意後見、法定後見)を利用するにあたって、後見人の申し立てから就任までに要する費用を一覧にまとめてみました。

後見人の『申し立て~就任まで』に要する費用比較

 任意後見 法定後見
後見人が就くまでにかかる費用約6万円~約26万円約2万円~約22万円
 (内訳) (内訳)
 公証人費用(任意後見契約) 約4万円 無し
 医師の診断書取得費 約3千円~約1万円 約3千円~約1万円程度
 家庭裁判所に払う印紙代 約1万円 約1万円
 医師の鑑定費用
(不要な場合も多い)
 約5~約20万円 約5~約20万円
専門家への報酬
(後見申し立てを依頼した場合)
(無報酬~約5万円)(約10万円)

上記の通り、申し立てから就任までに要する費用は、医師の鑑定の要否によって幅はあります。ただし、最近は医師の鑑定を不要とするケースも多くあるため、通常2万円~6万円程度を見込んでおけばよいかと思います。

専門家へ後見申し立てを依頼した場合は、別途報酬が発生します。任意後見の場合は、専門家が任意後見人になっている場合では無償とするケースもありますが、概ね5万円程度になるでしょう。
一方、法定後見の場合は、多くの場合申し立てを依頼した専門家がそのまま法定後見人に就任する訳ではないため、任意後見の申し立て費用と比較して割高になっております。

後見人が『就任した後』に要する費用比較

次に、後見人が就任した後の費用について解説していきます。

原則として、後見人は「本人が生きている限り」就任し続けるものとなっており、後見人が専門職の場合には、報酬を払い続けなければなりません。

長い方ですと、就任から10年以上にわたって報酬を払い続けることとなり、総額では数百万円に上る方もいらっしゃいます。

よって、後見人が就任した後に払い続ける費用は、その方の寿命によってさまざまであり、就任期間が長くなるほど費用の総額も高くなります。

また、財産の内容が多額・複雑であったり、家族が後見人に就任している場合などにおいて、家庭裁判所の判断で「後見監督人」が就く事があります。(任意後見の場合は、制度上必ず後見監督人が就きます)
後見監督人が就いた場合は、更に費用が発生することとなっています。

後見人が就いた後にかかる費用 任意後見 法定後見
 後見人に支払う報酬 契約で決めた額
月額~5万円
無報酬も可)
 家庭裁判所が決めた額
預金の額が多いほど高くなる)
後見監督人に支払う報酬家庭裁判所が決めた額
預金の額が多いほど高くなる)
月額1万以上~
 家庭裁判所が決めた額
預金の額が多いほど高くなる。後見人の半額程度が目安)
月額1万以上~

後見人に支払う報酬について、任意後見の場合は、本人と任意後見人の話し合いで決めることができるため、家族や知人等が任意後見人となる場合は、無報酬かもしくは低額とすることが可能です。

一方、法定後見の場合は、家庭裁判所が後見人の働きを評価し、本人の財産額を考慮したうえで、後見人に支払う報酬額を決定します。

法定後見人となる専門職へ支払う報酬を少しでも安くしたいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。報酬額は家庭裁判所によって決定されるため、「これをやれば絶対大丈夫」という方法は存在しませんが、少しでも減らせる可能性のある手段をご紹介します。

  • 親族が後見人になる。もしくは、専門職と親族で後見人となる。
    (後見人が複数の場合は、報酬が2倍になるわけではなく、同額を人数で按分することになるため、親族が報酬の一部を受け取ることにより、実質的に費用を安くすることができる)
  • 後見監督人に報酬受け取りを辞退してもらう
    (後見監督人によっては、少ない働きぶりに対する報酬を遠慮してくれる方もいますので、相談・打診してみる価値はあります)
  • 本人の財産(特に預金)を減らす
    (本人の預金額が多いと、後見人報酬も高くなる傾向があるため、保険の加入などにより預金を減らしておく)

成年後見人を『専門職』から『家族』に切り替える手順

現在すでに、本人に専門職の後見人が就任している場合で、特に目立った業務を行ってもらっていない方においては、後見人を専門職から家族や親族に変更できる可能性があります。

そうすることで、報酬を低く抑えたり、無報酬とすることが可能となります。

①現在の専門職後見人に加えて、家族も後見人に就任する申し立て(書式1)を、裁判所へ行う。
(申し立てが認められれば、後見人は専門職+家族の計2名)
                
②無事家族が後見人に就任出来た後、専門職後見人は辞任許可の申し立て(書式1)を、裁判所へ行う。
(申し立てが認めれられれば、後見人が家族のみとなる)

書式1:成年後見人(保佐人,補助人)選任の申立書(裁判所HP)

書式の名称は「申立書」となっていますが、辞任許可の申し立てにも使用できます。

『良い後見人』かどうかを見分けるポイント

法定後見人として家庭裁判所から選ばれた後見人が、果たして本人にとって「良い後見人」なのかどうかは、本人の生活を左右するとても大切な問題です。

過去に、専門職後見人が本人に対して「お正月に本人が注文したおせちをキャンセルした」「自宅を勝手に安値で売却した」など、極めて悪質な対応を取ってしまったケースもありました。

他にも、介護プランを決める会議に参加しない、緊急時に連絡がつかない、家族が質問しても答えない、本人の様子を全く把握していないなど、信じられないような対応をとってしまったケースもありました。

専門職ではない一般の方からすると、弁護士や司法書士から言われてしまえば、中々反論もできないかもしれません。また、専門職から「裁判所がこう判断したんだ」と言われてしまえば、それ以上何も言えなくなってしまうのも無理はないと思います。

では、後見人の「良し悪し」を判断するにあたって、どのような点に注意すればよいのでしょうか。以下に、後見人の良し悪しをチェックするポイントを明記します。

  • 後見人は、本人の健康状態や生活の実態を”自分の目”で確認していますか?
  • 医療や介護の話し合いの場に、後見人参加していますか?
  • 後見人から親身な家族に対して「あなたには関係ない話だ」「指示される覚えはない」などの発言はありませんか?
  • 後見人と、連絡はすぐにとれていますか?(電話してもつながらないなどはありませんか?)
  • 後見人に何か確認した際、後見人から「家庭裁判所に確認する」というばかりで無く、後見人自身の考えをしっかりと持っていますか?
  • 「自宅を売りましょう」などといったように、後見人は本人の財産を強引に処分させようとしていませんか?
  • 本人の家族が立替払いを行った際に、後見人早期に清算をしてくれますか?

上記のチェックリストに対して、すべて「はい」となった後見人は、とても良い後見人だと言えるでしょう。

一方で、半数以上が「いいえ」であったような場合、もしかすると何か問題のある後見人かもしれません。

後見人と本人や本人の家族の間で、意見の違いや考え方の相違が生じることは、ある程度は仕方ない面もありますが、後見人は本人のために行動しなければならない義務があります。

「本人の希望を叶えること」こそが、後見人に課せられた最も重要な任務です。

仮に、本人が希望を伝えることが困難な状況であったとしても、本人の家族や周囲の方々の意見を参考に、できる限りの想像力を働かせることで、よりよい支援ができるでしょう。

後見制度の事でお困りのことがございましたら、どうぞご遠慮なく当社までご相談ください。

目次